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陽の街 暮れの丘にて

通り雨が過ぎた後の丘では、短いパーティーが開かれていた。

草花が身につけるのは光の粒のアクセサリー。

射し込む陽を乱反射させ、空に唄い風と踊る。

 

一番美しく着飾ったのは私よ。そう自慢げに語ったあの花は、大きな何かに攫われていった。

着飾ることを知らない一輪は、風に揺られながら静かな声で隣の花に訊ねる。

 

「……ねえ、攫われた花はどうなってしまうの?」

「攫われた花はもう戻らないの。輪から外れてしまえば、二度と会うことはないわ」

 

クスクスと響くのは笑い声。それは、攫われるなんて愚かなことだと笑う声。

シクシクと嘆くのは泣き声。それは、もう帰らない誰かを悼み弔いに泣く声。

悲しいことだわ。

いいえ、そうじゃない。

助けて、怖いの。

大丈夫、歌いましょう。

通り雨が過ぎた後の丘では、今日も花たちのパーティーが開かれる。

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